21.ダイアトニックの暗い奴ら
「まだ、ダイアトニックについてやるの」って思うかもしれません。 こんなことより、もっとピアノをいっぱい弾く練習がしたい気持ちよく分かります。 しかし、私はこのダイアトニックを知ることによって、いくつものことが分かったのでした。 多分、分かったような気になったってことなんでしょうけどね。 でも、この「分かった気になる」ってことが、とても大事なことなんです。
え~と、前回は、「メジャーダイアトニック」と「(ナチュラルマイナースケールの)マイナーダイアトニック」の関係がどうとかこうとかでした。
簡単に言えば「メジャースケール」と平行調の「ナチュラルマイナースケール」は、同じ音列からできてるので、それぞれのダイアトニックコードの面子が一緒になっちゃうってことでした。 ってことは、この考え方からすると、その曲の調が長調なのか短調なのかってこと自体も希薄になってしまうってことなのでしょう。
でもジャズでは、結構こういった「あいまい」なことを好むんですよ。
例えば、名曲「枯葉」なんてのは、「 Gm 」のキーですが、「 Bb 」って考えてもいいみたいな、そんな感じです。
ナチュラルマイナースケールは、構成音がメジャースケールと一緒だから「マイナー」って言っても、そんなにマイナーらしくないのかもしれません。
ってことで、過去にもたくさんの人がいろいろと研究したんでしょうね。 こうやってジャズピアノを独学できるのは、すべてそういった人たちのお陰なんです。
その偉人さんたちの誰かが「ナチュラルマイナースケールって、イマイチなんていうか~マイナーっぽくなくなくな~い」なんて言った人がいたやらいなかったやら。 で、♭7度の音を半音上げた「ハーモニックマイナースケール」ってのを考えついたのでしょう。
というか、私思うにこの音階は昔からあったのではなかろうかと。
ものすごくエスニックというかインドというか中近東というか、場所はよくわかんないんですが~ 「ミニモニ」の「じゃんけんぴょん」のなかの「自分を信じていくのだぴょ~ん」の部分みたいな感じって言えばイチバンよく分かるかもしれません。(分からない人はこのくだり、忘れてくださ~い)
ということで、このハーモニックマイナースケールからもマイナーダイアトニックコードを作ることができます。 要領はナチュラルマイナーと全く同じで、1個置きに音を拾って4音構成の和音にすればいいのです。
どんな経緯によってできたのか知りませんが、このマイナーダイアトニックコードには、ものすごく良いところがあったのでした。
ナチュラルマイナーでは、「 Vm7 」だったところが、ハーモニックマイナーでは、「 V7 」になっています。 この「 V 」のドミナントってのは、コード進行の流れのなかでイチバン盛り上がるところなんですね。 つまり、この部分は安定したコードよりドキドキハラハラする不安定なコードのほうが良いのです。 そのほうが、安定した「 Im 」に進行したときに、「あ~良かったね」って思う気持ちが大きいのです。 いままで、「 Vm7 ってなんかイマイチだよね~」なんて言っていたところ、「え~ V7 も使えるの~」ってことになったわけです。 「これで、大盛り上がりだね~いや~よかったよかった~」って、しばらく喜んでいました。
ところが、なかには「でも、なんかこれって不自然じゃない」なんてケチをつける人がいたんでしょうね。 で、「どこが気にくわないの?」って訊いたら、「やっぱり♭6度と7度の間が離れすぎなんじゃないの~」なんてこと言ったりして。 まぁ確かに、この部分ってのは、このスケールの響きの特徴でもあるんですが、逆に個性が強すぎて嫌になっちゃうってところ分からないでもないんですけどね。
で、「だったら、♭6度の音も半音上げて、この部分を滑らかにしちゃいましょうよ~」なんて妥協案をだしたんでしょうね。
で、できたのが、「メロディックマイナースケール」です。
このメロディックマイナースケール、教則本によって「下り(高い音から低い音に行く場合)はナチュラルマイナーを使う」なんてこと書いてあるものもあります。 なぜそんなことするのか?ってことですが、なんだかいろいろな説があるようです。 また、そんなこといっさい書いてない教則本もあったりします。 どうやら、下りのメロディックマイナーは、歌いにくいなんて言う人もいるようなんです。 でも、私はあまりそんな感じがしないんですけどね~どうなんでしょうか。 というか、そんな細かいことどうでもいいのかもしれません。ここは気にしないことにしましょう。
で、このマイナーダイアトニックコードってのが、これです。
「これなら、 V7 にもなってるし、いいんじゃないの」ってところだと思います。 でもこれ、良く見るとメジャースケールとの違いは3度の部分1箇所だけなのです。
Aのメジャースケール
なんか、ごちゃごちゃやってたら、いつのまにかメジャースケールに近くなっちゃいました。 結局のところ、メジャーとマイナーの違いって、3度の音だけなんですね。
昔の人が、実際にこんな会話をしていたかどうか分かりません。 というか、そんなことどうでもいいんです。 こういったマイナースケールがあるってことが、分かりさえすればそれでいいんです。
まとめてみます。
メジャースケールは1種類ある。
マイナースケールは3種類ある。
- ナチュラルマイナースケール
- ハーモニックマイナースケール
- メロディックマイナースケール
そして、それらのスケールから作られたマイナーダイアトニックコードもある。
マイナースケールが複数あるのは、人それぞれ好みが違うってことなのかもしれません。
ということで、どれを使ってもいいし、混ぜて使ってもいいのです。 というか、そもそもこの3種類のマイナースケールは、6度と7度の音の違いだけしかありません。 ということは、メロディやらアドリブフレーズに6度と7度の音が出てこなければ、どのマイナースケールが使われてるのか特定できないってことです。 逆に言えば、6度と7度の音が出てこなければ、どのマイナースケールを使っても構わないってことでもあるんです。
「ってことは、やっぱり、3つとも覚えるのか~」って、ものすごくガッカリですよね。
とりあえず、3種類のマイナースケールだけでも12キーで弾けるようにしておいたほうが良さそうです。 そんなに難しくありません。私でさえできましたから。 コツとしては、まずナチュラルマイナーを徹底的に覚えます。 といっても音列は♭3度上のメジャースケールと同じなので簡単だと思います。 そして、ナチュラルマイナーと他の2つのマイナースケールの違いを意識しながら覚えれば簡単です。
ということで、今回はこんなところです。