14.ドミナントセブンスは、崖の上で追い詰められる
よく物語の場面展開とか構成などを表すのに、「起」、「承」、「転」、「結」なんてのを使います。 分かりやすい言葉で、「発端」、「葛藤」、「危機」、「クライマックス」、「結末」の5つに分けたり。 芝居などでは、「序」、「破」、「急」と言ったり。
どうやら物事ってのは、「安定した状態」と「不安定な状態」から出来ているようです。
だから、サラリーマンや主婦の平凡な日常を淡々と描いたものなんてのはドラマになりにくいんでしょうね。 誰だって、平穏な暮らしを続けていくと刺激が欲しくなるし、あわただしい日々が続けば安らかに暮らしたいって思うものです。
音楽も物語のように、安定と不安定な状態を行き来しながら展開していきます。 登場人物のキャラやセリフがメロディなら、場面の設定や雰囲気はコードといったところでしょうか。 別な言い方をすれば、コードには状態というか状況を作る機能があるといえるわけです。 当然、安定と不安定の間には、「ちょっと不安定」ってのもあります。
そして、それぞれにカッコイイ名前も付いてます。
- トニック ・・・ 安定
- サブドミナント ・・・ ちょっと不安定
- ドミナント ・・・ 不安定
まあ、簡単に言えば、音楽の時間にやった「 C (ドミソ)」、「 F(ファラド) 」、「 G(ソシレ) 」の主要3和音ってことなんですけど。 ジャズでは、「 C 、 Dm7(Fの代理)、 G7 」のコードを使った、「 IIm7 → V7 → I 」(ツー・ファイブ・ワン)が一般的です。
つまり、「 Dm7 → G7 → C 」のコード進行ってことです。
そして、今回の主役「 G7 」。
ドミナントセブンなんていう言い方もしますが、ものすごく不安定な状況を作ります。 だからこそ、トニック「 C 」に行ったとき、安定して「ホッ」とするのです。
試しに「 C → G7 → C 」なんてのを弾くとき、「 C → G7 」のところでやめてみます。 なんだかとっても「 C 」が弾きたい~って思いませんせんか?
つまり、ドミナントセブンってのは、こういった効果があるというか、そのために存在しているもんなんです。
では、なんで「 G7 」が不安定か?ってことですが、コードの構成音に不協和音程があるからだそうです。
でも、「 G7 」を弾いてみても、あんまり不協和って気がしませんよね。(私だけでしょうか?)
しかし、この協和とか不協和の感じ方ってのは、人によって違うんですよね。 だから、コードの構成音それぞれのインターバルを実際に弾いてみて、不協和の原因を探してみるのも面白いんですけど。
- 「ソ」と「シ」は、長3度で協和音程です。
- 「ソ」と「レ」は、完全5度で協和音程です。
- 「ソ」と「ファ」は、短7度で不協和音程です。
- 「シ」と「レ」は、短3度で協和音程です。
- ・・・・・
こんな調子で、12通り全ての組み合わせを試してみます。 そして、イチバンの不協和なヤツを見つければいいんです。
でも、私はこういうのってすご~く苦手なんです。 最初のうちは、「これってけっこう不協和音程、これはそこそこ協和音程かな~」なんてやってますが、だんだんと分からなくなってくるんです。 というか、だんだんとどうでも良くなってくるんです。
例えば、カー用品店に行きます。
そして、芳香剤のコーナーで、見本のニオイを順に嗅いでいきます。 「柑橘系」、「ミント」、「ヒノキの香り」なんてのが20種類くらいあります。 最初のうちは、「さっきのピーチってのが良かったかな~」なんてやってますが、2順とか3順とかすると、もうどうでも良くなってくるんです。 「あ~もう、キンモクセイでも何でもいいや~」みたいになっちゃう。 そして結局は、「あ~もう分からない。分からないよ~」って頭を抱えたり、少し気分が悪くなったり。
だから、車の芳香剤は一度も買ったことがありません。 多分、私はソムリエなんてのも無理かもしれません。
え~いきなり話を戻しま~す。 ということでどうやら私の場合、一般的なことを基準にしておくのが無難なようです。
「シ」と「ファ」。どうやら、コイツらが原因らしいのです。 インターバルが、「完全4度+半音」ってことは増4度です。
これ、トライトーン(3全音)なんていう言い方もあります。 つまり、「全音3コ分 = 半音6コ分」。 この「半音6コ分」ってのがポイントです。 1オクターブってのは、半音12コですよね。 ってことは、その半分。つまり、コイツらはそれぞれがオクターブの表と裏のイチバン遠い位置にいるってことです。
「シ」と「ファ」が、増4度なら、逆の「ファ」と「シ」も増4度ってことです。 だから、仲が悪くてイチバンの「不協和」ってことにしておきましょうか。
「 G7 」のコードトーンじゃありませんが、「シ」と「ド」みたいに半音でぶつかるほうが不協和なんじゃないの~隣人トラブル~なんて思ったりもします。 まあ、納得ができなくても仕方ありません。世の中なんてそんなもんです。
じゃあ、この「シ」と「ファ」ってのは「 G7 」の何なのか?ってことです。
- 「シ」は3度。
- 「ファ」は♭7度。
つまり、この2つが「 G7 」にはものすご~く大切ってことです。 これさえあれば、ご飯が3杯・・・じゃなくて、え~と、ドミナントセブンになれるってことです。
で、その不安定な不協和の状態から、安定な協和の状態に行きたいって感じることが「ドミナントモーション」なのです。 「不協和な増4度は、協和な長3度に行きたい」まあ、単純にこれだけのことです。
さて、この増4度があるのは、「 7 」だけじゃありません。
そう、「 dim 」と「 m7♭5 」。 「 dim 」なんて、2つも持っています。 だから、不気味というか、かなり複雑な音なんでしょうね。
「 m7♭5 」は、1度(ルート)と♭5度が増4度なんです。
確か、前々回に「 m7♭5(11) は、全音2コ(半音4コ)下の 7(9,13) を押さえても可~」ってのを載せたような気がするんですけど~ つまり、「 Am7♭5(11) 」は、「 F7(9,13) 」のように押さえてもいいよ~ってことですが。 Am7♭5 の1度と♭5度が、 F7(9,13) の3度と♭7度と同じってところがポイントになります。
え~と、今回はドミナントセブンについてまとめたんですが、今のところ理解できなくても大丈夫です。
ある日、いろんなところの関連性が突然見えてくるもんです。私がそうでしたから。 どうやら人間ってのは、無意識にでもなんとか理解するための努力をし続けているのかもしれません。
ドミナントセブンってのは、ドラマで言えばイチバンの見せ場というか大詰めのようなものです。 今まさに犯人が追い詰められているところです。 もう、そのくらいの認識で充分かもしれません。
そして、次回ですがドミナントセブンの要(かなめ)でもある3度と♭7度の上にテンションノートを乗っけていきます。
まずは、9度と13度の2つの穏やかなテンションノートを乗っけます。 でも、より過激なテンションノートである♯9度とか♭13度なんかも使いたいですよね~ 実は、全然難しくありません。新たに覚えないでも弾けちゃう裏ワザ?ってのがあるんですけど。それをやります。 そんなに簡単なら使いたいですよね~#9度と♭13度。
そう、どうせ片平なぎさとか船越英一郎に追い詰められるんだったら、近所の公園とかコンビニなんかじゃなくて、ビルの屋上や崖のほうがいいですよね~